台風が通り過ぎた後、洗濯機に中途半端に洗われたような、白と灰色の雲の後ろに、鎮座するようなブルーがなんとも言えない夏空。はなみずき通にできたスタバにお決まりのホットコーヒー グランデ ブラックを充填にイクのであるが、なんだか落ち着かない。満ちるものがない・・。まあ、その理由なんてどうでもイイ。

 

 

 大学をでて、東京に出た昭和の終わり。バブルの芽が地面から頭を出した頃。旅行会社の営業マンとして、ピンポンノックのように旅行のパンフレットを持って大企業の受付を訪ねていた。目的は受付にリカちゃん人形のように座っている美人の受付嬢でもあった(笑)「お茶の時間にでも、ぜひ読んで下さい。」 築地の電通の受付はモーターショーの出てくるモデルクラス、リクルートの受付は100万ドルの笑顔だった。

 

 

 夏の夕方には、背中にはビッチリと汗が染み込んだシャツが張り付いていた。先輩が教えてくれた、サラリーマンの墓場のような喫茶店がルノワールという喫茶店だった。新橋の地下の隠れ家のようなその場所は、入ると3人位はサラリーマンが死んだように寝ている。(笑)会社の目が届かない、治外法権のような時間無制限な暗い場所で、不動産屋は地図を広げ、デイスコに繰り出す出陣前のハイレグ女のルージュに楽しまされる。おしぼりが目に染みる、多少顔をふこうが、脇汗まで拭いてしまおうが、この店はサラリーマンの味方のような店だった。

 

 

 ドアがあくたびに、サングラスのいかつい男や、銀座帰りの品のあるご夫婦、紳士が読書をたしなみ、うだつが上がってそうにないサラリーマンは決まってFRIDAYを読んでいる。新橋というひとつの街の風景がそこに滾っていた気がする。

 

 

 旅行会社の営業マンの楽しさを教えてくれた先輩が何人かいたが、そのすべてが同行営業の後のルノワールだった気がする。受付の美人に旅行のパンフレットと名刺を置いてくるのは、陸の漁業でオキアミ戦法と教えてくれた。「あの美人の受付から、個人的に旅行を頼まれたら一人前」と力説された。「お茶の時間にでも、ぜひ読んで下さい。」「旅行に行くときは、お友達価格にしますからよろしくお願いします。」この2つの受け売りセリフがどんだけドラマを産んだか・・・。

 

 

 経費削減で、受付嬢が削減されたけれども・・・なりませんね。(笑)ビジネスはお客様に幸せを生み出さなくてはならないはず。無人で電話番号の内戦を押して下さいというスタイルはいかがなものか。せめて、ちゃんと受付があって、ボタンだけ押したら、そよ風のように現れて笑顔で応対してほしいものです。内線を回せなど、フィルターにかけられるようで、エゴの塊の気がする。受付というのは、手書きのはがきでいうと、最初の季節のあいさつであり、その会社の情緒がなければならぬのだ。(^^) その会社を出る時に、受付嬢も見送ってくれるというのはとっ
てもイイんです!!(笑)好感度抜群なんよね。

 

 

 親父が放送局にいて、大学生の頃アルバイトでいくと「おはようございます。」と美人の受付嬢に挨拶して、かえってくる言葉が好きだった。「お疲れ様でした」ひとつで癒やされることもある。友人の家にイクと一番最初に迎えてくれるのが、ペットのワンちゃんだ。最初は吠えるのだが。首のあたりを揉んであげると、ぺろぺろとオレを舐めかえす。3回も行けば、友達になった気がする。玄関が出迎えてくれない企業は寂しい。先日愛媛新聞に行ったら、受付に2人も美人な女性がいて・・その笑顔の対応に癒やされた。受付こそが「お客様に幸せをもたらす」入口ですよね。

 

 

 さて、最後もう一度ルノワールへ(笑)

 

 

 小生は旅行の説明などをするときも大概が「ルノワール」を利用した。旅行のパンフレットを広げればテブルの上が目いっぱいになるのだけど、相手の背もたれに身を委ねることを許さず、密接な距離でトークが繰り広げられる。時に「戦いの場」として廻りが見通せるステージとなり、パスポートの申請書を書くにも互いの共同作業が必要とされた(笑)喫茶はテーブルが小さいほうがいいと思う。

 

 

 あーオレはなんでルノワールに惹かれていたんだろう。松山にはそんな場所が存在しない。地方にも進出してほしいものだ。

 

 

 バッテリー活動が停止に向かう頃「ルノアール」へ行った夏の夕方。

 

 昆布茶をすすったあと、沼地の緑のような椅子に背中は吸い込まれていった。

 

 人は「特別な場所」がお好きなようであります。

 

 今日はこんなところです。